"福島第一原発と被爆した作業員の取材" by 樋口健二

  • 2011.03.30 Wednesday
  • 09:24
20110329004830.jpg
「樋口健二さんって写真家知ってるか」と、
最近だけで、写真に携わる友人から3回聞かれた。
「このご時世にめちゃくちゃ売れてるらしいぞ」
続けて彼らはみな、樋口健二さんを"最近売れてる"と表現していた。

樋口健二さんと言えば、著書『売れない写真家になるには』を
この"かざろぐ"でも取り上げさせてもらった事がある。
"売れない"と自負していた写真家が、"売れてる"とは奇妙な話だ。
半信半疑ながら、私はもう一度『売れない写真家になるには』を手に取った。
久方ぶりにその本を開くと、バリバリ…と気味の悪い音がした。

………

1977年6月30日、浪江町の大きな農家の隠居部屋で、骨と皮ばかりとなった(福島第一原発の下請け作業員)佐藤さんが、福島弁でしゃべってくれた話は次のような内容でした。

「日当が2000円、1972年から1年だな。放射能除染作業といってよ、下に沈んだ放射能を雑巾で拭き取る仕事さ。服装が重装備でな、宇宙人のような格好だ。全面マスク、フィルムバッジ、ポケット線量計、アラームメーターを首から吊り下げてな、お互い宇宙人のようじゃなと言い合ったけ、原発建屋内のどの辺かわからんし、教えてもくれなかった。
とにかく、蒸気がムンムン出て、大きな扇風機がウォンウォンうなってたぞ。まあ、すごい所でよ、熱くて、苦しくてよ!全面マスクなんか前が曇って見えねえんだ。放射能は下に沈んでるからってよ、それを取り除くことだけを言われてたっけ…。」

この話をしてくれた佐藤さんは、3ヶ月後、骨髄性のガン(白血病)で苦しみながら亡くなりましたが、話に出てくる原発のなかの労働現場の現実、とりわけ「宇宙人のような」という言葉は、ぼくの頭から離れませんでした。

………

"宇宙人のような"という服装は、
昨今のテレビでたまに目にするあの白い防毒スーツだろう。
全面マスクは『AERA』の表紙で話題を呼んだものだろうし、
アラームメーターは、"ハイパーレスキュー隊"が
インタビューで説明していたあのペン型のものだ。

東北関東大地震がおこる前には
"宇宙人のような"服装なんか想像もつかなかっただろう。
今は、それだけ身近に迫る危機に変わったのだ。

実に皮肉だ、と思った。
"売れない"写真家が、"売れている"。
それは、"起こってはならない"事が、実際に"起こってしまった"からだ。

………

筑豊の炭鉱住宅でお会いした永田利男さんが、福島第一原発内での労働について語ってくれた内容は次の通りです。

「1978年5月、友人に誘われて中部電力の浜岡原発に行き、最初は原子炉を据え付ける作業、二回目は木の伐採をしました。79年1月20日、友人二人と問題の福島第一原発に行きました。着いた日に身体検査、その後簡単な安全教育を受けましたが、放射能が危険だとは一度も聞きませんでした。
わしら三人がした仕事は、福島第一原発三号機の地下一階の濃縮廃液タンクに足場を組む仕事でした。タンク内には何十万レムというものすごい放射能があるということで、現場監督は『もしタンクに落ちたら、コンクリートで固めて外には出さん、後は遺族が東電と交渉して何千万、何億と金を出させるより方法はない』、その上に、『アンタらが3000ミリレムや5000ミリレム浴びようが、体に異常はおこらん』と平然と言っていました。
何日目にか、廃液タンクで作業中に、どこから流れ出たかわからない水であふれ、履いていた長靴を越えて、みんな濡れ鼠になりました。三日後、水があたった皮膚にブツブツと小豆大の湿疹ができ、痒くて痒くて我慢できなくなりました。そこで、それぞれが双葉町の個人医院や双葉厚生病院に行きましたが、『食中毒だから2,3日休むように』と、わしらの言うことに取り合ってくれません。どこでも同じような事を言うんで詰め寄ったら、町医者の一人は、『本当のことを言ったら、この町にはおられん』と言っていました。その上、会社も誠意を見せないし、このままでは本当に殺されてしまうと思って、九州に帰ってきました。」

この話を悔しそうに話してくれた永田さんは、他の方と同じように、倦怠感に襲われて、働きたくても体が思うように動かない、夜は氷マクラなしでは眠れない状況であることも伝えてくれました。また、「二回だったけれども他人の名前で原発に入れられた」という恐ろしい話も付け加えてくれました。

………

またも最近のニュースを彷彿とさせるような表現が垣間見える。
とりわけ長靴を超えてきた放射能の水と
その後に出来たという湿疹の話は、
福島第一原発2号機地下の溜まり水に浸かった作業員が、
"ベータ線火傷"と診断された先日の報道にリンクしている。

実際にこの症状を経験している永田さんの事を考えると
「健康に別状はない」と報道された作業員は、
湿疹ができ、倦怠感に襲われ、最終的に動けなくなるのだろうか。

さらには「医者は正確な診断を下さず」に、
「遺族には大金が支払われる」という道を辿るか。
考えれば考えるほど、身の毛のよだつような暗黒労働である。

話を戻すと、永田さんは比較的早い段階で"被曝"をした分、
まだ命を落とさずに里帰りが出来たのだそうだ。
「まだ多くの人が放射能の怖さを知らずに原発に通っている。」
と永田さんは続けて語っていた。

同僚でまだ働き続けている人の中には、
「髪の毛がなくなり、歯がボロボロになり、
それでもまだ原発に通う者もいる。」という。

現在も東京電力の社長は入院中と身を隠しているそうだ。
いつの時代もしわ寄せがくるのは下請けや下積みの労働者なのだ。
永田さんもそれを知ってか、こんな風にもらしていたという。

「みんな身体がダメになってから気づくんだ」と。
1000年に一度とも言われる震災に見舞われた日本。
直面する危機は決して原子力発電所や放射能問題だけではない。

見えない恐怖感に怯えていてもしょうがないが、
メディアには出てこない正しい取材結果を
理解しておくことも決して無駄にはならないはずだと思う。

樋口健二さんも、この危機を予測した訳ではないと思うが
きしくも"売れない"写真がこのような形で注目されたのは
なかなか複雑な思いなのかも知れない。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

author

selected entries

categories

archives

profile

others

search this site.

links

TWITTER FEED

FOREIGN PHOTOGRAPHERS

JAPANESE PHOTOGRAPHERS

Illustrator downloads

Book Seller Info

  • Hacknet
  • 代官山の洋書店、写真集から建築・インテリアも充実。東京都渋谷区恵比寿西1-30-10-1F。Tel:03-5728-6611。

  • 21st EDITIONS
  • 米国NYにオフィスがあり日本国内からも通販可。毎年職人本に送られるIPPY AWARDを受賞している。Tel:800-965-3536。Email 21st@21steditions.com

  • 書肆小笠原
  • 通販古書店、写真集が充実。絶版古書中心に扱う。埼玉県さいたま市南区大谷口5733-101。

  • RIN BOOKS
  • うちの近所にオフィスがある古本屋。洋書中心にアート関連書籍を扱う。ネット販売のみ。

  • ミキ書房
  • ネットのみの古本屋。在庫は少ないが、写真集で稀少絶版本も扱う。埼玉県さいたま市南区大谷口 1208-2-1号棟302号。Tel:048-883-4997。

  • 甘露書房
  • ネット販売のみだが古本を全般的に扱う。オリジナルプリントの取扱もあり。川崎市中原区新丸子東1-833。

  • BOOK CAFE RAINY DAY
  • 出版社SWITCHの地下。ギャラリーカフェのような作りでライブなどイベントもある。東京都港区西麻布2-21-28スイッチ・パブリッシングB1F 。Tel:03-5485-2134。

  • COW BOOKS
  • 暮しの手帖編集長の松浦弥太郎さんが主催。洒落た書籍空間。東京都目黒区青葉台1-14-1。Tel:03-5459-1747。

  • Dragonfly CAFE
  • COW BOOKSの支店。南青山のアートブックカフェ、2階にある。東京都港区南青山3-13-14-2F。Tel:03-3497-0807。

  • NADIFF
  • 写真美術館と現代美術館などに入ってる雑貨、アート書籍、ギャラリー空間。東京都渋谷区恵比寿1丁目18-4 1F。Tel:03-3446-4977。

  • BOOK OF DAYS
  • 新潟にある本屋さん。アート関連書籍に強く年中セールをしてる。

  • Shelf
  • ワタリウム美術館の裏にある古本屋、写真集に徹してる所がいい。東京都渋谷区神宮前3-7-4。Tel:03-3405-7889。

  • on Sundays
  • ワタリウム美術館の地下にある本屋。カフェとバーも併設。東京都渋谷区神宮前3-7-6。Tel:03-3470-1424。

  • 青山ブックセンター
  • 説明いらず、渋谷が本店だが個人的には六本木の方が落ち着く。東京都港区六本木 6-1-20。Tel:03-3479-0479。

  • ユトレヒト
  • 青山の根津美術館近くのお店、稀少本や雑貨も扱う。東京都港区南青山5-3-8 パレスミユキ2F。Tel:03-6427-4041。

  • SHIBUYA PUB&BOOKSELLERS
  • 説明。東京都渋谷区神山町17-3。Tel:03-5465-0588。

  • VACANT
  • マッチアンドカンパニーのギャラリー兼書店。東京都渋谷区神宮前3-20-13。Tel:03-6459-2962。

  • ジュンク堂池袋本店
  • サイン会やイベントを積極的に開く書店、大型店舗ならでは。東京都豊島区南池袋2-15-5。Tel:03-5956-6111。

  • 古書ビビビ
  • 下北沢にある巷にあふれる雑本は買い取りしもらえない。東京都世田谷区北沢1−40−8 土屋ビル1階。Tel:03-3467-0085。

  • ヴィレッジヴァンガード
  • 現在の店舗は350店を越えるとか。1号店は1986年、名古屋市天白区より。

  • BLIND BOOKS
  • 名前がいい、2009年オープン、値段は高め。東京都杉並区高円寺北2-7-13高円寺銀座ビル2F左。Tel:03-5373-0907。

  • GALLERY MoMo
  • 六本木と両国にある、現代っぽい絵画が中心。東京都墨田区亀沢1-7-15 。Tel:03-3621-6813。

  • ひぐらし文庫
  • 鬼子母神の近く、年に一度の古本祭の際も見物。東京都豊島区雑司ヶ谷3−3−14。Tel:03-5944-9968。

  • ON READING / ELVIS PRESS
  • 名古屋だから簡単には行くことが出来ないけれど興味あり。名古屋市中区錦2-5-29。Tel:052-203-8024。

  • 恵文社
  • 真面目な店名らしからぬポップでリリカルな作り。京都市左京区一乗寺払殿町10。Tel:075-711-5919。

  • ガケ書房
  • 関係の"セコハンブックほうぼう"というところが写真集を多く扱う。京都市左京区北白川下別当町33。Tel:075-724-0071。

  • Calo Bookshop and Cafe
  • イベントなどを行う雑貨中心のお店。大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5階。Tel:06-6447-4777。

  • モズブックス
  • ネットショップで路面店はなし、意外な写真関係書もある。大阪府和泉市室堂町5-1-7-807。Tel:0725-55-7906。

  • part time booksellers
  • デザインやアートが中心だが写真家の作品もある。杉並区高円寺南4-24-4-2F。Tel:03-6304-9698。

  • 古書ドリス
  • 現代アート/写真/デザイン/異端文学/映画に強い。徳島県板野郡北島町中村字本須114-5。Tel:088-677-6618。

  • Bueno Books
  • アーティストを抱えるスロープギャラリーも兼ねる。on line only。

  • 東塔堂
  • ギャラリースペースもある古書店。渋谷から徒歩10分。

  • SFT
  • スーベニアフロムトーキョー。六本木国立新美術館の地下にある基本雑貨屋。

  • 夏目書房
  • 神田にあるボヘミアンズギルドの販売元。ネットストアの在庫充実。

  • Dash Wood Books
  • アメリカの出版社、ライアンマッギンリーなど扱う。

Interior Shop Guide

  • pur annick
  • 原宿。ビーンバックのチェアやラグが充実。

  • シボネ青山
  • ベルコモンズのB1。大物小物全般的にセンスいい。

  • Cassina
  • 不朽の名作を復刻して普及させてるカッシーナ。

  • General Store
  • インダストリアル系統の雑貨インテリア。

  • MAISON GODNARSKI
  • 柔らかいガーリーな感じのインテリア。

  • 燕子花
  • カキツバタと読みます。アートと暮らせるインテリアショップ。

  • CONCIERGE
  • コンシェルジュグランドという代官山店がレトロでいい感じ。

  • maruse
  • 今は懐かしのフィラメント照明のショップ

  • equipee
  • 貴重なアンティークアイアン系のお店。

  • Graphio Buro
  • ワークインテリアでもデザイン的な物が集まる。

  • IRONGENIC
  • 高架下にあるアイアン系に強いお店。

  • boiserie
  • 学芸大にあるボワズリー。だいぶアンティーク。西洋風です。

  • SHP
  • 大型のリフォームや店舗デザインが得意。

  • 天童木工
  • あまり説明の必要も無い感じ。ネットショップも充実しています。

  • biotope
  • ナチュラルな北欧陶器のお店。

  • LIVING MOTIF
  • 六本木のAXISに入ってる手堅いインテリアショップ。

  • TOYO KITCHEN meuble
  • 廃墟をイメージしたモダンバロックのショールーム。

  • MITATE
  • 珍しいバス用品専門店。和。

  • ラ・クッチーナ
  • 日本で一番キッチン用品を扱ってると思います。

  • Flying Saucer
  • 銀座店のあるキッチン用品店。楽天も充実。

Travel Information

  • Hotels.com
  • 世界のホテル予約を行う。期間限定のセールやグローバルなネットワークが魅力。

  • Expedia
  • かしこい旅、エクスペディア。海外のホテル網は群を抜く、全て最低価格を保証している。

  • トラベルジグソー
  • 世界のレンタカー会社を網羅。所々扱っていない国については、abisなど各社サイトから。

  • 航空券.ネット
  • 国内外への航空券比較。札幌以外の北海道などなかなかお得な内容。

  • カウチサーフィン
  • ワールドワイドな「田舎へ泊まろう」を実現してるサイト。

  • じゃらん
  • いわずと知れたリクルート運営の旅行サイト。ふらっと宿をとるなら。

  • HIS
  • 海外旅行のHIS。店頭手数料7500円がウェブだとかからない。

  • GLOBAL WiFi
  • 海外専用のルーターサービス。

Travel Agency

Printing Company

Art Info

Original Print Info

Stock Photo Info

Others Info