写真展"『古寺巡礼』−仏教文化の開花− by 土門拳

  • 2013.07.01 Monday
  • 10:33
土門拳
写真展"『古寺巡礼』−仏教文化の開花−飛鳥〜平安前期; by 土門拳
期間:2012年6月14日〜7月10日
場所:FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)
住所:港区赤坂9丁目7番地3号Midtown内

懐かしい。何度も訪ねた寺、撮影で訪れた寺。
久しく思い出していなかった記憶との邂逅。
展覧会場での素晴らしいひとときだった。

渡岸寺の十一面観音さまの爆笑面を見て驚いた。
神護寺の薬師如来さまの紅の唇、虚空増菩薩顔面の迫力。
大事にしまわれた記憶は鮮やかなまま残っていた事に気づく。

思えば土門拳さんの仏像と言われると
どうも京都より奈良のイメージが先行する。

神護寺、東寺、三十三間堂・・・。
もちろん京都の名刹も数多く写している。

しかしどうだろう、展示を一巡して胸中に鮮烈に残るもの。
聖林寺の十一面観音、薬師寺の三尊像、あるいは桜の室生寺・・。
やはり奈良にいらっしゃる仏像様たちだ。

今でこそ京都は仏教と仏像の古都のイメージが強いが
仏教は京都の平安京以前に奈良の平城京に歴史がある。
さらに全盛時代だったと思えば納得もつくというもの。

その歴史の深さ、重さが写真には写っていた。
飛鳥仏の重厚な眼差しといったら他にない重さだ。
作り手、仏師の魂まで伝わってくるような・・。

12年という歳月をかけて撮影された「古寺巡礼」
その間に二度の脳溢血にかかり最後は車椅子からのシャッターだった。
まさに命賭けの写真たち。それを表すような土門さんの言葉が印象的だった。

「ぼくの左足が体を支えきれなくったとしても
ぼくの眼が相手の視線をとらえられる限り
ぼくは写真を撮るのである」


写真展"アラスカ・悠久の時を旅する"by星野道夫

  • 2012.11.22 Thursday
  • 19:06


写真展"アラスカ・悠久の時を旅する"by星野道夫
期間:2012年11月16日〜2012年12月5日
場所:フジフィルムスクエア
住所:六本木ミッドタウン内

「出会いをキーワードにその足跡を辿る構成にしました」
と本作品を担当された編集の方に聞いて見に行った。

星野道夫とアラスカに住む人々、また棲む動植物。
出会いと聞いて初めに思い浮かんだのは、そんな出会いだった。
しかし、作品を見ると気付く。

出会った動物たちの生き生きとしていること。
出会った人々が思いやりと思索に深いこと。
出会った季節をめぐる言葉の美しいこと・・・
(特に展示会場内にある「北国の秋」が美しい)
そして、ついに出会った神話は5年の迷走の出口になった。

展示はこの出会いの順序、動物から神話に至るように流れていく。
始まりの元となったシシュマレフ村長との手紙は一見の価値あり。
会場先行発売の写真文集『悠久の時を旅する-The Eternal Journey-』にも
手紙のやりとりが序文に転載されている。

「僕はシシュマレフ村に行きたいのですが知り合いがいません」
と書いた星野道夫。
「それではうちに来ると良い。あなたを歓迎しますよ」
と応えたシシュマレフ村の村長。

シシュマレフ村はガイドブックにも載らないような小さな村だ。
それが今や東京の中心地、六本木で毎日数百人の人に見られている不思議。
一人の写真家が動かすことの出来るものの大きさを改めて感じる。

本展示の最も良い所は二点ある。
写真が大きいことと、星野道夫の全体を通して見られることだ。

空から見た雪山を歩くグリズリーがはっきりと認識できる。
無数の足跡と共に歩むオオカミ、北極海の崖にあった海鳥の巣。
まさか遡上のサケの腹から卵が飛び出しているとは知らなかった。
知っていると思っていた知らない世界が開かれる。
大きいことはいいことだ。

そして全体を通して見られることも忘れられない魅力のひとつ。
動物と人を通してアラスカと出会った星野道夫さん。
長年見てきた事や発表してきた数多くの作品を俯瞰できる作りだ。

とりわけ写真文集の『悠久の時を旅する-The Eternal Journey-』では、
それら物語が付与され、写真にストーリーが生まれている。
これほど多くの著書、掲載誌から引用された作品集は他に見あたらない。

その点、たとえば私の好きな「シロフクロウ」などの写真は
この撮影の後に星野さんは襲われて怪我したんだっけ。
と一枚一枚のストーリーを思い出してしまうが、その記述は見あたらない。

やはり森を見せながら木を見せるのは難しい。
だが、そんなことを思わせる余地は会場になく、
訪れた人は純粋にその素晴らしさに魅せられるはずだ。

この会場で見るべきは森、それで魅力を感じた木が見つかったら
また自分で掘り下げていけば良いというだけのこと。
星野道夫の世界への入り口に、これ以上の場所は思いつかない。

それともう一つ。星野道夫の展示を見ていつも思うことがある。
なんで亡くなってしまったのか、これは世界にとっての損失だと思う。
薄っぺらいエコなんて言葉が、一人歩きすればするほどそう感じさせられる。

「人間の歴史は、ブレーキのないまま、ゴールの見えないまま霧の中を走り続けている。だが、もし人間がこれからも存在してゆこうとするのなら、もう一度、そして命がけで、ぼくたちの神話を作らなければならない時がくるかもしれない」

この文章を書いた頃の星野道夫もそうだった。
5年ほど撮り続けたアラスカ。それでも発表の形に困っていた。
そんな時に出会った「神話」という道しるべ。創造主ワタリガラスの存在。

このゴールのない霧を晴らしてくれるワタリガラスはいるのだろうか。
ねえ、誰かワタリガラスがどこにいるか知っていますか。
まず僕らに出来ることはワタリガラスが何かを知ることくらいかもしれない。


追記。
そうだった。トップの写真は本展示に販売されている
写真文集の『悠久の時を旅する-The Eternal Journey-』。
出版社は様々な写真集を手がけるクレヴィスだ。

その上に飾っているプリントは、
私のオフィスにある星野道夫さんのカリブー。
静かな悠久の時を見ていると不思議と心が落ち着くのだ。

写真展 "たまむし" by 鈴木紀博

  • 2012.11.11 Sunday
  • 21:22


写真展 "たまむし" by 鈴木紀博
期間:2012年10月27日〜2012年11月18日
場所:東京都写真美術館地下1F展示室

「ノリ!おぉ、ノリ!」
いつも鈴木紀博をそう呼んでいる。
だから美術館で名前を目にするのは違和感がある。
ただ、それは不快な違和感じゃない、喜ばしい違和感だ。

地下一階のグレーの壁に展示されていたのは、
これまでに何度かブックとして見たことのある作品だった。
それもあってか、新鮮というよりは懐かしさを覚えた。

「なぜ『たまむし』という題名を付けたか」
もっぱらタイトルで悩んでいる所を見ていただけに
初めに私の頭に浮かんだ疑問は、それだった。

「群集から離れ、外から客観的に
そして鳥瞰的に街を眺めたかった
そのときいつもの街の表情が変わる
街の表情が撮りたかった」

鈴木紀博の「たまむし」に対する挨拶文だ。
言葉少なに語る様は、他の展示者よりも堂々としている。
付け加えるなら、書くことが無かったんじゃない、
書かなくても分かるから書かなかったという感じだ。

展示を読み進めると見えてくる共通点。
これは「花火」の写真だ。だが一般的な楽しい花火大会ではなく、
冷めた目で見た客観的な花火の写真展。

花火大会に来た若者たちの笑顔は流れている。
暗い夜を華やかに照らすのは僅かに小さな花。
光はビル陰に隠されて街のネオンにも負ける。

カメラという機械の持つ最も冷たい眼を活かした作品。
それは鈴木紀博の思惑通り、客観的で鳥瞰的な街の表情だ。

ひとつ「私ならこうしたい」という点がある。
直接的じゃない写真が絶妙に並び、見終わったら集約される。
しかし初めの1枚目が、やや説明的な花火の写真になっている。

なんだろうこれは、という所から、あぁどれも花火だったのか、
と気づくような流れがあると、少しハッとする感覚が生まれそうだ。
しかし今の並び順は、鈴木紀博の思い描く世界。
一見、乱雑とも言えるその並び方の中にはメッセージがある。

刻一刻と変わる街の色、火花の色。
留まることのない人の波、街の時間。
それにしても最後の砂浜の花火の一枚は最高だった。

写真展 "写真力" by 篠山紀信

  • 2012.11.09 Friday
  • 21:03


写真展 "写真力" by 篠山紀信
期間:2012年10月3日〜2012年12月24日
場所:東京オペラシティアートギャラリー

混んでる、というのが第一印象。
平日の昼間だというのに人の流れが絶えない。
ロッカー待ちの列やミュージアムショップのレジ待ち。
おそるべし写真力、いや篠山力。

時代を代表する女優はじめ著名人を撮影してきた。
高い天井まで届くほど壁一面にずらりと並んだ人の顔、姿。
まさに圧巻というのはこのこと。

白が基調の部屋、それに黒が基調の部屋。
写真美術館展示の鈴木理索を思い出す。あるいは蜷川実花。
小さな通路を抜けたときの大空間の変化に度々驚かされる。

それにしても歌舞伎の写真が素晴らしい。
とは言えアサヒカメラ新年号の表紙を飾っているものではない。
その隣にある役者、観客の全員がカメラを見ている写真の方だ。

「どうやって撮ったんだ、信じられない瞬間」と
2012年10月号の『芸術新潮』も言っている。
そう有り得ない、だから面白い。

歌舞伎の次の空間は真っ暗になってヌードの部屋になる。
篠山謹慎の、いや篠山紀信の真骨頂。
それにしても、果たして「相撲はヌード」なのだろうか。

V.A.写真展"TOKYO PHOTO" at 六本木ミッドタウン

  • 2012.10.20 Saturday
  • 20:41


V.A.写真展"TOKYO PHOTO"
期間:2012年9月28日〜2012年10月1日
場所:六本木ミッドタウンホール

international photography fairというだっけあって
展示写真、来場者ともに国際色が豊かだった。

欧米系の顔立ちに英語でない言語、
というのが最もすれ違う率が高い。
ヨーロッパ系の来場者がメインなのだろうか。

写真はヨーロッパメインか、というとそんなことはない。
荒木、森山、蜷川といった日本の写真ももちろん多い。
中でも中国の写真は無視できないほどに多かった。

今回で四回目のこのイベント。
良いところは各ギャラリーの人にお会いできること。
悪いところは各ギャラリーの人が意外と不在にしてること。

展示写真の多くはヴィンテージとも言える風合い。
少なくともギャラリーが扱うオリジナルプリント。
ほとんど販売されているので市場価格が一目でわかる。

前回と比べて価格が少し下がったような。
ライアンマッギンリーは240万、ニックブラントが27万。
それぞれとても好きな画だったから覚えてる。

印象に残ったといえばローズギャラリーの女性の写真も良かった。
たしかマーティンパーが撮ったポートレイトだ。
ツアイトフォトの北井一夫も良かったし、
と羅列してると良いものがたくさんあったと気づく。

エールフランスの広告を追っていったシリーズも良い。
それでも一番よかったのはリチャードアヴェドンのsnake nude。
その一枚の前だけ別格の空気が流れていた。

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